ファイルの同期サービスとしてDropboxをやめてiCloud Driveを使うことにした。Dropboxは2019年の春ごろ、無料で同期できるデバイスの数が3台までに制限されてしまい不便を感じていたからである。
Dropboxの同期は他のサービスに比べて賢いので、有料版のDropbox Plusにアップグレードして使い続けるという手もあった。料金も2 TBならiCloud Driveとあまり変わらない(てかDropboxのほうが少し安い)。便利な付加機能があることも考え合わせるとDropboxのほうがおトクとも言える。
しかし、残念なことにDropboxには容量が少なくて安いプランがないのだ。
自分の使い方では、容量2 TBも必要ないし、単に複数のMac間でファイルが同期できればいいだけなので、費用が安くて済むiCloud Driveを選んだ。
DropboxからiCloud Driveへの切り替え手順をメモしておく。
これまで ~/Dropbox フォルダ内に置いていた同期対象となるファイルをすべて ~/Documents フォルダ内に移動する。
Dropboxの同期が完了するのを待って、パソコン (Mac) と「この Dropbox のリンクを解除…」する。
Dropboxアプリケーションを削除する(DropboxのWebサイトにサインインして、サーバー上のファイルが消去されていることを確認しておくとよいだろう)。
システム環境設定「Apple ID」>「iCloud」を開く。
iCloud Driveの「オプション…」ボタンをクリックする。
「“デスクトップ”フォルダと“書類”フォルダ」にチェックを入れる。
その時点で“デスクトップ”フォルダと“書類”フォルダ内にあるファイルが、それぞれ、“デスクトップ - <コンピュータの名前>”フォルダと“書類 - <コンピュータの名前>”フォルダの中に移動されてしまうので、元の場所に戻す。
iCloud Driveの同期が完了するのを待つ。
以上、移行に際して特に難しいことはない。
あとはiCloud Driveの同期がまともに働いてくれれば問題ないのだが…… アップルのネットワーク系サービスは“It just works”(不可解な挙動を揶揄)なので少し心配だ。
数日後、さっそくトラブル発生。
別の新しいMacに同じApple IDでサインインし、“デスクトップ”フォルダと“書類”フォルダを同期するように設定して、しばらくするとデスクトップにクラウド上のフォルダやファイルが表示され同期が始まったのだが……
2日たっても、3日たっても同期が完了しない。
Finderウインドウで見ると、クラウドストレージと同期していないファイル(と同期が完了していないフォルダ)には「雲に下向き矢印」の小さなアイコンが付いている。
Finder上で雲に下向き矢印のアイコンが表示されているファイル、例えば example.txt (同期が完了していない状態の)をターミナルで見てみると、
% ls .* .example.txt.icloud
のように、ドット (.) で始まる .icloud という拡張子が付いたファイルになっている。中身はバイナリ形式のプロパティリストで、同期対象となる元のファイルの名前とサイズの情報が含まれる。
この .icloud ファイル(いわゆるプレースホルダー)に関連付けられたクラウド上のファイルが、ローカルファイルシステムにダウンロードされる(同期が完了する)と元のファイル名になって、雲に下向き矢印のアイコンは消えるというわけだ。
同期を開始してから、かなり時間がたったのに、このアイコンが消えないままのファイル/フォルダが多数残っているのはなぜ? いつ終わるの?
DropboxやOneDriveなら数時間待っていればすべてのファイルが同期する程度の容量なのに、同期しない。いくらなんでも時間かかりすぎではないか?
Dropboxでは同期処理の進捗が表示されるので終わったかどうか分かりやすい。今回、もしDropboxで同期したなら2時間もかからないような分量なのだが、iCloud Driveでは待てど暮らせど同期が終わらない。進んでいるのか止まっているのかすら分からない。
アップルのサポートに電話して「iCloud Driveの“デスクトップ”と“書類”の同期が完了しません。進捗状況はどうすれば確認できますか? 同期メカニズムについて詳しい資料はありませんか?」と、質問してみた。
この記事を書いている時点では残念ながら、アップルのサポートサイトにそのような資料は公開されていないらしい。 したがってユーザーは、どのように動作するのが正しい状況なのか確かめるすべがない。
とりあえず、手元のMacで観測された状況からすると、どうやらiCloud Driveは、Dropboxの機能でいうところの「スマート シンク」、OneDriveの機能でいうところの「ファイル オンデマンド」を有効にした場合と似たような動作になっているようだ(公式にどのように動作するのが正しいのかを説明する文書は公開されていないので推測だが)。
それならそれで、一部のファイルを自動ダウンロードして、さも同期を進めているように見せながら、途中でほっぽりだすようなことはやめてほしいものである。 ユーザーはほっといたら自動で全体の同期が完了するもの(DropboxやOndDriveのデフォルト動作と同じ)と勘違いするでしょがっ!
さすがアップルのクラウドサービス。直感的で使いやすい。
“It just works”
さて、解決方法はというと、システム環境設定「Apple ID」>「iCloud」を開いて、「Macストレージを最適化」のチェックを外せばよい。
このオプションの説明には、
十分な空き領域があるときは、iCloud Driveの内容がすべてこのMacに保存されます。空き領域が足りなくなると、古い書類はiCloudのみに保存されます。
と、書かれているのだから、チェックをつけたままでもすべてのファイルが自動ダウンロードされるのが当然と考えるのがフツーだと思うが、実際にはそうならない(このMacのローカルストレージの空きは、iCloudストレージ容量の100倍以上あるのに)。
“It just works”
ストレージ最適化の設定はデフォルトのままで、すぐに同期したい場合は次の手順を実行すればよい。
- Finderウインドウのサイドバーにある「iCloud Drive」をクリックする。
- iCloud Driveの内容が表示されるので、その中の「書類」フォルダを右クリック(副ボタンをクリック)して表示されるメニューから「今すぐダウンロード」を選択する。
- 「デスクトップ」フォルダにも同じ操作を行う。
これで、デスクトップと書類のすべてのファイルが同期する。同期が完了していれば、そもそもメニュー項目「今すぐダウンロード」は表示されない。
Dropboxなど他社のファイル同期サービスから乗り換える人は、注意しておかないとデフォルトの挙動が違うので(すべて同期したつもりが、実はローカルファイルの中身はほとんど空っぽでしたみたいな)痛い目にあいそう。
まあ、これはこれで、全体を同期したい場合と、部分的にオンデマンドで使いたいファイルだけ同期したい場合を使い分けられるので悪くはない。と、前向きに考えることにした。
関連記事:「フォルダをiCloud Driveと同期させない方法」 「iCloud Driveのファイルが移行アシスタントにより古いファイルで上書きされる」 「“.”(ドット)で始まる名前はシステムだけが使用できます。別の名前を指定してください。」 「消えたiCloud書類」
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