それは仕様です。
といえば、1990年代、PC市場を支配し、栄華を極め、その専横ぶりから「悪の帝国」とまで呼ばれ、米国司法省と独禁法違反を巡って争い続けていたマイクロソフトが、有償サポートサービスに助けを求めてきた顧客に対して言い放った台詞として、今日に言い伝えられている。最近は、マイクロソフトもすっかり好々爺になってしまったので、そんなエピソードを知っているのは年寄りだけかもしれない。
近年、カスタマー・エクスペリエンスの向上を目指すICT企業各社は、サポートにも力を入れており、いまどき、顧客の質問にこのようなつっけんどんな答え方をする技術サポート要員はいない。
いない。いない。いない……
ハズ、だ。と、思っていたのだが、先日発売された新製品を購入した某社に、その奇妙な挙動について問い合わせたところ、久々に、
それは仕様です。
を、ブチかまされた。
「それは仕様です」の別バージョンとして、
予期した動作です。
てのも発明されている。
サポートに「仕様です」とか「予期した動作です」のように回答されると、脳内で「どうせ素人に技術的な説明なんかしてもわからないだろ。グダグダ言わずに、だまって、そのまま使ってりゃいいんだよ。いちいち電話してくんな。」に変換されるため、思わずブチ切れて、「ちーがーうーだーろー!」「このハゲ〜!」(2017ユーキャン新語・流行語大賞ノミネート)と怒鳴り返してしまう。歳をとって気が短くなったせいもあるかもしれない。
21世紀に突入してから、はや十数年が経過した今日、多くの企業が顧客満足度を上げるために努力を重ねてきた結果、20世紀に比べカスタマーサポートの品質は、かなり向上している。いまだに「仕様です」とか「予期した動作です」の一言で済ますサポート要員がいることに驚きを禁じ得ない。
そのような人員が、エンジニアを名乗っているなら、なおさらだ。「それは仕様です」「予期した動作です」のような間抜けなひとこと回答のどこにエンジニアリングの要素があるというのか。そんなんで済むなら、誰でも、今日から、いますぐ、研修不要で『なれる!SE』(サポートエンジニア)だ。どんな質問にも即座に的確にお答えします「それは仕様です」以上おわり。ワシでもできる、暇なので是非雇ってくれ。
もっとも、仕様ですという答えが一概に悪いとはいえない。