2021-07-26

足の速い茶色のキツネがぐうたら犬を飛び越えて逃げます

ひさかたぶりにMacにフォントを追加しようとしたところ、

Font Book (Font Book.app) の表示メニュー「カスタム」を選んだときに、表示されるデフォルトの文がなんだかおかしい。macOS Big Sur 11.4では、

足の速い茶色のキツネがぐうたら犬を飛び越えて逃げます。

に、なっている。

そう、これは欧文フォントの表示サンプルでよく用いられる英文をアレンジした、

The quick brown fox jumps over the lazy dog and runs away.

の和訳と思われる。

アップルよ、お前さんは、王様治郎か? 直訳ロックか? 笑わせようとしてるのか?

DTP関係者なら、このBig Sur付属のFont Bookの間抜けさ加減がよく分かるに違いない。 quick brown fox と呼ばれるこの文は、

ラテン文字のアルファベット26字をすべて用い、かつ重複をなるべく少なくした短文

——ウィキペディアより https://ja.wikipedia.org/wiki/The_quick_brown_fox_jumps_over_the_lazy_dog

つまりフォントごとにアルファベットがどのように表示されるのか、その違いを見比べるためのものであり、文の内容ではなく、すべてのアルファベットが使われていることに意味があるのだ。

欧文フォントの字形を確認するために作られた英文を、そのまま和文に翻訳してどうすんだよ。

日本語フォントに対しては日本語表示の確認に適した文章をおくのが、あるべき姿だろう。

ちなみに macOS Catalina 10.15.7 までは、サンプル文として宮沢賢治の『ポラーノの広場』の一節が使われていた。

あのイーハトーヴォのすきとおった風、……

というやつである。

和文フォントの文字の形を確認するための文章として、これがベストとは言えないかもしれないが、少なくとも quick brown fox の直訳よりは100万倍マシ(当社比)だろう。

アルファベットと違って日本語で使われる文字の種類は非常に多いので、すべての文字を表示して確認するわけにもいかない。そこをどうするかが、ソフトウェア製作者のセンスが光る、腕の見せ所じゃないのか。

その項目はカスタムなので好きな文章に変更できるんだから別にいいだろう。とかそういう問題ではない(重箱の隅ではあるが)。

Big SurのFont Bookでも表示メニュー「サンプル」を選ぶと、「あのイーハトーヴォの……」と表示される。一貫性がない。行き当たりばったりの変更だ。

なぜ、OSアップグレードにかこつけて、まともに動いていたソフトウェアをわざわざ壊すのか理解できない。

せめて元に戻してはどうか。


macOS Ventura 13付属のFont Bookからは、表示メニュー「カスタム」が廃止され、その機能は「サンプル」に統合された。 「足の速い茶色のキツネが……」は、相変わらずだ。

Font Bookのサンプル表示、OS X Mountain Lion 10.8.5まではまともだったのに、OS X Mavericks 10.9あたりから、どんどんヘッポコになっている。

まあ、世界中で気にしているのは私ひとりだけなのだろうが、細部へのこだわりはどこいっちゃったの? アップルちゃん。

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